miniature garden.


▶I'll whisper the story to him softly.

今世の栄華を極めた人間は、かつて救いを求め讃えた神の座標へ自分たちこそが到達したことを示そうとする傲慢に満ちている。
撚りをほどいた禁忌のひとつ、生命の複写創造――クローン技術は長らく低迷していた。
人間のための秩序を創造し、人間のための秩序に則り、人間のための繁栄してきたからこそ、勝手に築いた生命の最も美しい在り方に囚われ、人間は立ちはだかる倫理に檻として囲われている。
泥濘で足を引っ張りあう姿こそがその生き物の定義を人間たらしめていることに気付かないまま、"倫理の檻"の中で分裂を起こしているのだ。
白飛びするほどに注ぐ晩夏の光を木下闇のベンチから見ていた若い男は、遠い過去を語るように目を伏せる。
「瞼を閉じること、光に目を焼かれること、他の術を求めて彷徨うこと。
それらは等しくすべて人間……いや、すべての生命のために与えられた祝福であるのさ」

――秘密裏に技術研究が続けられていた某所にて
とある研究員が、倫理上では明るみに出すことのできないクローン技術の研究資料と、発表を控えていたクローン生命体の延命と観察の記録を含む論文のすべてを破棄し、成体まで記録を続けることに成功した数少ないケースであるクローン検体を連れ出して逃亡をする。
情報が漏れだすことそれすなわち、国家単位での倫理の理解・解釈程度と軍事情報を含む機密の漏洩である。
公の国際指名手配ができない事実を良いことに、研究員と成体クローンは"倫理の檻"を認識しながらもクローン技術を神への冒涜として目を閉じて過ごす大勢の人間が居る世界に紛れ、静かな暮らしを始めるのだった。



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