じっくりと手間をかけられたであろう様子にふさわしく深い焙煎をした黒豆の芳ばしく強い香りに紛れ、覚めるような柑橘のフレーバーが微かに後を引いて鼻を抜ける。胸にスッと落ちる香りが涼しげな風を思わせていた。
 鶴間夫妻が現在暮らす家ではなく蔵と同じ敷地にある母屋に戻った伊三路たちは、夏野に促されて縁側に座っていた。
一言二言こそ当主たるには童心が過ぎると苦情めいたことを語ったが、きりりとした様子で振り返ると以降はそれらの一切を伊三路たちに感じさせることをしなかったのだ。
 こぢんまりとした庭は現在の彼らの家と比べれば貧相ともいえるほど簡素であったが、この場所に残されてなおもしっかりと手入れをされている一部の庭木は古ぼけていながら堂々とすることは忘れない。その佇まいからひとつの推測が立つ。
おそらく、元々あって庭を飾っていたほとんどは現在の家に植え替えされたのだ。
ここに残っているものはなんらかの理由や、性質から移植に向かないと判断したものだろう。
そう考えればいくつか目につく空白の席や一部が柔らかく、雑草がない土の色に納得がいく。
時間は経っているものの一度は掘り返され、再び平らにした後の土であるためにそういった姿をしている。
配置された庭の岩や飛び石の名残を見てそう考えながら、祐はグラスに口をつける。
 一方で、隣で足をぶらつかせる伊三路は襟のボタンをあけて寛げた胸元を手で仰いでいた。
手元にあるグラスの中で氷がからんと涼しげな音を立てると、体感ではまだ早いと感じるような夏もあっという間に訪れるだろうと思える。
一瞬こそ先取った季節を思わせる程度に今日という日は好天であった。遠方にこそ厚みのある平らな雲が見えるが、真上は薄い水の底を眺む色がある。
地面はゆるやかに熱されているものの、配置こそまばらながらひとつひとつが豊かな緑のおかげか幾分かの涼を感じられていた。
一言で語って、のどかであった。と、祐は感じていた。
「いい飲みっぷりねえ、いさじちゃん」
 覗きこんで首を傾げる仕草をした夏野がうふふ、と、柔らかな風が掠れるような声で笑った。
伊三路が一気に飲み干したことで空になったグラスへと新たに黒豆茶を注ぐ夏野の表情は先ほどまでの怒りや呆れを消し去り水面のような穏やかさを湛えている。回し揺らしたピッチャーから水滴が落ちぬよう、薄い色の布巾で底を拭っていた。
結露したピッチャーの中で揺れる黒豆茶の波や透明なグラスのふちが、外から差し込む日光を吸収してはきらきらとした粒状の反射光をそこらじゅうへばら撒いている。
「急だったから余計に若者にはつまらないかしらね、こういうお茶請け。ごめんなさいね。でも美味しいのよ、これ。お気に入りなの」
「この水菓子、おれもすきだなあ。甘酸っぱさの程度が好みだ。最後にほんの少しだけ抜けていく苦味がきりりとあるところが特に気に入った。なんていう名前の柑橘なの?」
ひとり一皿と白くまろい形をした陶器の小鉢にマスカットの粒とふさごとへと丁寧に剥かれた柑橘類が盛り付けられているそれを指さし、伊三路は夏野を振り返る。
「あら、水菓子だなんて古風ないいかた。夏みかんですよ。この品種がとりわけいいの。あとで名前を教えてあげましょうね。お気に召したようでうれしい」
目尻を下げ肩をすくめると、わっ、と喜びを露わにした夏野は、自身の皿から銀色のフォークを使って中身をすこしずつ伊三路の小鉢に分け与える。
「えっ! 悪いよ。おれにはおれの分があるじゃない。ばちがあたっちゃうから、平気だよ」
「おなかいっぱいなのよ。もしよろしければ食べてくださいな。それに、せっかくならいただいたメロンのほうを食べたいの。はじめての方からのうれしい貰いものですから」
 沓脱ぎ石を挟んだぶんの感覚をあけて座っていた暦へも微笑み、「こよみちゃんが昨日持ってきてくれたという焼き菓子と一緒に三時にね」といたずらに笑う。
 おやつという習慣に後ろめたさをしらない夏野はほくほくと胸に温かさを灯し、頬の位置を高くしていた。
些細な生活に四季を重んじる果物を見下ろす伊三路のことを祐は漫然とした焦点で合わせ、そして無意識なことにもカメラのレンズを絞る向こう側のような部分でもある周囲のぼやけて滲んだ色を見ていた。
「やはりお昼前はさっぱりしたものがよいですし、三時過ぎにはきっと区切りがつかずとも一度は家に戻るでしょうから、お抹茶と一緒に。どうかしら、焼き菓子の甘さならそれがすてきでしょう? おばあちゃんね、これでもお抹茶には少々心得がありますのよ」
ピッチャーの結露を拭き取るためだけの清潔な布巾で濡れた手を軽く拭い、夏野は残りの果物を暦の小鉢へ移していた。
「口直しにもちょうどいいですし。お砂糖とメロンの甘さはすこし違うものじゃない? するする召し上がっていただけると思うわ」
ふふ、と得意げに言うと立ち上がり、すり足で盆を片付けに下がっていった。
「あの!」すかさず声をあげた暦が手伝いを申し出ようとすると、部屋をでたすぐ角から「由乃の様子をみてくるのよ。男の子たちはおやつをたべていなさいな」と、まばらな木の葉の緑色が反射する廊下に機嫌良い声が響くのだった。
 しばらくその後ろ姿を面々は見送っていた。
そしてたっぷりとした間をもってして陶器の中身を険しく見つめていた祐が徐ろに小鉢を差しだした。銀色のメッキが施されたフォークの柄がてらりと光る。
その動きに連動するかのごとくゆっくりと伊三路が眉をひそめるのだ。
困惑と半々の表情のなかでいかにもらしい眉の角度が探る意図はすでに聞き返すまでもない。
「嫌なわけではないが元より間食をする習慣がない。妙な後ろめたさのようなものを知りながら食すよりも喜ぶやつに食べられたほうがいいだろう」
「喜ぶって? 水菓子たちが? それとも夏野が?」
その言葉に下瞼をひくりと動かすのは祐だった。
 食べすぎる罰よりも食べ残す罰のほうが傲慢である。と、祐は考えもしたが、おそらく茅間伊三路の人生に食べ残すというイベントは発生したことがないのだ。
だからこそ、誰のために用意されたものであるかという気遣いとしての意味に本質を求めるのである。
「正確に語らずとも果物に自我はないだろう。お前はうまいものが食べられる、俺は慣れないことに妙な覚えをしなくていい。夏野さんは変にこちらを気遣う必要がない。一体なにが不満なんだ」
「……わかったよ。誰もそんなことが起きるところでなかったら、次は"いつもとちがうこと"にも挑戦したらいいんでない。きみがなんだって見えないものに縛られているのかは知らないけれども、やてみたらいいよ。今度さ。今日この場で気遣いをするひとはだれもいないよ、安心して」
否定や妥協を以てやんわりと言葉は肌を刺した。しかし食べ物には罪がないといいたげに唇を尖らせた伊三路は自身の空になった小鉢と祐の小鉢を交換するために手を伸ばす。
「前向きに検討はするだろう」
「機会がすぐ来るとは限らない。なんてことを言いたげなずるい顔だ。今に見ていろというはなしさ。さっきの夏野の話を聞いたでしょう。お抹茶の時間がくればきみのことをそれこそ穴が開くまでみてやるからね、おれは」
 弾けんばかりの果実にかぶった水をもまとい輝く瑞々しい緑色と、若い芽に似た萌ゆる色が重なる。
まだぶすくれた顔のまま、マスカットの粒を狙い突き刺したフォークを口に運び、丸みのある頬を咀嚼に連動して動かしていた。
「おいしいか」
だんまりとしてつぶれた饅頭のようにむっすりとした顔を続けたまま果物を口に運んでいたが、吊り上がっていたはずの眉が次第に許されて穏やかになっていた。
あまりの静けさから逃れることにも似てその様に問うた祐の先の言葉に、伊三路は笑顔で答える。
「うん! おいしい!」
ほとんど反射的に返事をし、そしてなぜ己がこれを食しているかということを回想すると、はっとしたのちに悔しげを隠さずに「キィーッ!」というもはや某動物の威嚇声のようなわかりやすい負け惜しみの金切りをあげていた。
「どう、どう。もう、伊三路くん落ち着いて。ほらみてみて、上から持ってきたおもちゃ! かわいいよ。スイカのかたちのコマとかあるの」
 折りたたみ式の小さなちゃぶ台へグラスを置き、なだめようとする暦は伊三路の座る場所へ距離を詰めて尻を寄せた。
興味を引いて覗き込ませた古い折り箱の中には、無造作に投げ込まれた古めかしいこけしや小さな張り子や、紐があったりなかったりとする木製のコマが押し込まれている。
傾ける箱の中をざらざらと鳴らすと伊三路はぴっしりと背を正してそれを覗きこむ。目をらんらんとさせて肩を寄せるのだった。
「わぁ、本当だ。かわいいねえ! かわいいねえ! 張子のつぶらな目が。それにこまも。ほんものははじめて見る」
陶の小鉢を置き、フォークが内側でカランと鳴る。
 途端に興味が移ったこどもそのものの様相である伊三路がはしゃぎすぎた手振りで残りの中身をぶちまけないように、祐は小鉢をそっと自身のほうへ引き寄せて遠ざけた。
「ね! ほら、ぼくも昨日から気にしてたんだけど、ジュースとかお酒とかの瓶ふたも可愛くてさ。むかしは親戚が集まるたび飲食したのがゴミとして出るからさ、蓋だけもらっておいてあとから金槌で叩いたんだよ。切り口を叩いて潰してからバッジやおはじきみたいにして集めてたんだあ。懐かしくってさ。田舎はみんなやるよねえ」
「そうなんだ……?」
 暦の語る幼少期の思い出話と噛み合わない記憶を持つらしい伊三路は目を丸くし、犬がそこらじゅうの匂いを嗅いで回る際のような小刻みの相槌をしながら興味深く話を聞いていた。
「伊三路くんはちいさいころ、なにして遊んでた?」
「うーんと、どうだったかな。外あそびができたころはそれ一辺倒だったよ。かんたんなおもちゃよりも、川魚をつかんだり大きな蛙やうさぎを追いかけたりするほうが好きだった。おもちゃは鞠くらいかな」
 思い出すように遠くを見ていたが、ふと閃いては記憶の中の鞠の大きさを両手で表す。
そしてリズムを刻むというよりは緩慢に音頭を取るという表現こそが相応しい様子で手鞠歌を口ずさんだのだ。
言葉の端々に茅之間の詳細な地名や、山や川の名を聞くことから土地に根付くものらしい歌を続けて伊三路は肩を揺らした。
楽しげに一節の区切りで切り上げると伏せたまつ毛を瞬かせ、弾く勢いで顔をあげた。
「祐は?」
「印象的なものはない」
さっさと返ってきた答えに伊三路はぽかんと唇を半開きにしたが、祐の眉根が普段よりも微かながら深く寄った機微を察すると「ふーん」と、言うだけで済ませたのだった。
苛立ちや不快を表すよりも、不安を示すような心許なさがその機微から感ぜられたのだ。
おそらくそれを祐自身が自覚しているわけではない。ゆえに伊三路はふと離して適切な距離を保つのである。
「鞠は暦や祐よりもゆののほうが経験があるのかもね。なんだかきれいなお着物も興味があるようだったし、お針子の興味を持たせるときに好きな着物をほどいて上辺の生地にしたことくらいあるのかも」
「ああ! 鞠も細工物みたいなものもだもんね。さっき着物を見つけていたときも、作り帯があれば自力で着られるのに〜って探してたし、ユノさんああいうの案外すきなのかも。慣れない帯幅だと苦戦するのかな?」
「たしかに結びかたも生地の様子も違うから――」
 突如として言葉を切り、伊三路は鼻先を動かした。
首の側面に不自然としてジリッと砂を踏み躙るような、あるいは一枚板に並んだ細胞を引き裂くような――とにかく、鋭い先で表皮の真に薄いところだけを引っ掻いて痛覚をにわかに刺激する。そして内側に引き込む連鎖的な痛みが走った。
ずくりとする部分を反射的に手のひらで抑えた瞬間、全身が粟立つ感覚に支配された。
瞬きより早く伝播したその気配に頭皮がざわついて産毛が逆立ち、髪の毛は僅かに広がった。同時に血の気が引いた顔が痺れに似た感覚を伴ってはサッと冷たくなる。唇が震えた。
先ほどまで顔をつき合わせていた暦の表情をまじまじと見つめるものの、当の暦はきょとんとして伊三路を見返していた。ゆっくりと瞬きをする。
グツグツと煮立つ砂糖水のように粘度のある灼熱が、平穏を愛しく思う心臓の半分にべったりと塗りたくられたかのようだった。
取り立てて並べ連ねる不安が目の前にあるわけでもないというのに胸がざわつく。
手の届かぬ場所で強風で煽られる木の葉を眺むようにもどかしく、チリチリと肌を刺す感覚は見えざる炎の如く肌を舐めるのだ。
まるで同じ空間に居ながら一人だけ存在を切り取られて敵地に放り出されたかのような――。
「なんだろう、いやな予感がする」
 その言葉を自ら口にして伊三路は記憶を手繰り寄せていた。瞬間、もしやと極めて薄い根拠ながら繋がって合致した記憶の断片がひとつの仮説に収束する。
「へっ?」
暦が伊三路の言葉の意味を聞き返すよりも早く、伊三路は立ち上がり、内部を知るわけでもない母屋の奥へ走り出した。
 ひとつ呼吸を置いて行かれた暦が伊三路の不躾をさすがにと咎めようと立ち上がりかけると同じくして、短い悲鳴と陶器の割れる鈍い音が耳を劈いて鼓膜を掻く。
張り付いた高い声の余韻が耳の管に渦巻いているのだ。
耳を塞ぎたくなる。
途端に電流が走る。
圧が万物の自重をより地面に押さえつけようとして働いているのではないかと錯覚するほどの緊張が走り、取り残された暦と祐はすぐに動くことはできなかった。
粘つく重い気配に身体が物怖じしている間にもこの時間という流れは無情であることに、遠くから車のエンジン音が響いてくる。
 その正体を察し得た暦は顔を青くして音もないまま口をはくはくと動かし、恐る恐る祐を横目で見た。
鉛の唾を飲み込みはするものの、祐は自身が想像するよりも自分が冷静でいることを知っていた。
伊三路が瘴気と語る侵蝕が、浸透することに対して生来の相性という理論や根拠に基づく以外の引力を持っていることを証明するかのようだった。多少の不快や苦痛はあるものの、かつてほどの息苦しさは感じられないのだ。
一方で、目の前の暦は自分の知り合いが危険に晒されているのではないかという精神的な不安が尚更に作用して身体を硬直させてしまっている。
大抵のところ、責任の所在や安否や、その後をやり過ごすようなことを考えているのだ。
 祐はこの奇妙な付き合いの関係を一蓮托生の道連れになり得ると仮定すると、他人との友好性を保つ鎹であると日野春暦を認識し定義している。つまり、日常と非日常の境目にある茅間伊三路を彼こそが至って普通の人間たらしめるのである。
そして己は、茅間伊三路という人間を至って普通の人間というには凡そ納得のできないであろう部分をなるべく手短にするための撒き餌である。
ならば簡単なことだ。
 静かに立ち上がると蔵からいくつか持ってきたボロの刀や模造刀のなかから、祐は伊三路が握っていたような長さである短刀を引っ張りだす。
そして目尻に沿って横目の視線だけで祐を見ていた暦がギョッとし、声にならない声で喉を掠らせながら名を呼ぶのだ。
「何が起きているのかはわからないが、彼女らの悲鳴の様子から考えてあとになって起きたことを隠すのは不可能に近い」
 まだ立ち上がることのできない暦には底冷えするように光って見える祐の瞳がどこまでも他人事を語る様相でいることが恐ろしいと思える。
腹の内で臓腑の温度が下がり、まるで最初から空白であったと嘯く生温かさが滞留し、吐き気を催すのだ。
まるでそこに彼自身は含まれていないかと錯覚するほど淡々としている。
なるほど彼を避ける人々の気持ちがわかってしまった気がする、と、暦はどこかでうっすらと考えていた。
「茅間でなくともいわゆる化け物を初見で一撃にするとは思っていないだろう」
「う、うん。その、あのさ、ぼ、僕に……できることって、あると思う?」
「……ことが起きているということは誤魔化せない。ならば無理に隠さなくていい。だが、なるべく気を逸らしつつ騒ぎを外部に漏らさない努力は必要だろうな。お前が同じ考えならば喜一郎さんを足止めを頼む。エンジン音は十中八九あの人だ」
「そ、それは責任重大だね」
 暦の震えた声の方向を祐は一瞥した。
怯える相手の脆い部分をわざわざ踏んで歩くつもりはないが、この事態においてそれぞれがそれぞれを代わってやれることはない。
伊三路は茅間伊三路の役目として力を振るわねばならないし、祐はいざとなれば関係の定義に則り己を差し出さねばならなかった。
仮に茅間伊三路が利害関係に律儀であればあるほど、日野春暦を含めた奇妙な共生関係のバランスをとることも己がするべきだことのひとつであると考えたのだ。
 なぜならばそれ以外にできることがないのである。
特にこの土地で、ないしこの関係において――他人と関わる部分においてのクッション材として暦の右に出るものはまずいない。
「だろうな。だが、お前にあって茅間にも俺にもない最も強力なカードの一つだ。悪いとは思うが、代わってやれるものではないこともわかるな」
 障子紙を透過する陽の光が顔に影を落とす。
畳の目が不気味な切れめのように浮かび上がるなか、祐は身を屈めて暦を立ち上がらせるために手のひらを差し出した。
変わらず暦の表情は困り果てまま、ますます強張って凍りついている。
「ぽっと出の人間は確かに説得や言いくるめの主役に向かないが、根拠の有無なくとも言葉をそれらしくたらしめるには不足ないだろう。協力しないとは言っていない」
その言葉を聞き、暦は奥歯を思い切り噛み締め、自身の頬を叩く。
ばちん、と拙い音がする。
そのまま何度も頬を両手で叩きつけ、目にうっすら涙を浮かべながら、最後に暦は差し出された手を頼らずに立ち上がった。
「……うん。やってみないとわからないって前に言ったのは、いざ逃げのためじゃない。そうだ。そうだろ。うん、やれるだけやるよ。僕。その、だから、も、戻ってきた時にヤバそうだったら助け舟ちょうだいね。結崎くん」
肯くと、祐は「わかった」とだけ呟く。
胡乱な廊下の先を見つめる半分横顔のその角度を、睨めつけるようにして眉の角度をつり上げていた。



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